Outlook が使用できない、Outlook の動作が非常に遅いなどの問題が発生した際のトラブルシューティングです。Outlook で問題が発生した場合、原因は多岐に渡るため、問題を早急に解決するためには、情報を正確に把握して、問題の被疑箇所を絞り込むことが重要です。
調査のために必要な情報
Outlook で障害が発生した場合には事前に以下の項目について確認します。
マイクロソフト社に調査依頼を行う際などにも有効な情報です。
※ 必ずしも全てをヒアリングする必要はありません。
- どのような現象か (Exchange Online に接続できない、グローバルアドレス帳が参照できない、他人の予定表が参照できない、Outlook が遅い、メールが送受信できない等)
- OS/Outlook のバージョン、ビルド (winver コマンド、Outlook の help の画面を取得する)
- OWA は使用可能か
- 影響範囲 (特定のユーザー、特定のネットワーク セグメント等)
- ハード的な問題はないか (ネットワーク疎通の問題、ディスクのエラーなどないか確認)
- キャッシュ/非キャッシュモードの確認 (キャッシュの場合、非キャッシュに設定することで改善されないか)
- エラーが発生する場合、タイミングの確認やエビデンスの取得
- エラーメッセージを確認し、既知の現象と合致するかどうかを確認
- 現象が発生した日時 (いつから発生しているか。Outlook の設定を変更した、OS/Outlook が固まった後等)
- 一時的なものか継続して発生しているか
- Outlook 端末の再起動を行い、改善されるか
- Outlook プロファイルの再作成を行い、改善されるか
- 別マシンに同一ユーザーでログオンし、Outlook で Exchange Online に接続した場合改善されるか (オフライン データがキャッシュされるので注意が必要)
ワークグループ クライアントで Autodiscover 接続に失敗する場合の対処方法 (Exchange Server)
Autodiscover は SMTP アドレスのドメイン名から Exchange Server を自動検出し、空き時間情報やオフラインアドレス帳サーバーの URL を取得する機能です。 Autodiscover 接続に失敗すると以下の問題が発生します。
- Outlook プロファイルの自動作成ができない
- 不在時のアシスタントが機能しない
- OAB のダウンロードができない
- 予定表の空き時間の参照ができない
Autodiscover 接続に失敗している場合、以下を確認します。
- DNS サーバーに必要なレコードが登録されているか
- プロキシの除外設定がされているか
DNS サーバーに必要なレコードが登録されていない場合の対処方法
ワークグループのクライアント端末から Autodiscover 接続を成功させるためには DNS の A レコードかクライアント端末の Hosts ファイルに以下の記載が必要です。
対応させる IP アドレスは通常 CAS アレイの IP アドレスです。
Autodiscover.SMTP ドメイン名
上記の設定が存在しない場合、CAS サーバーに接続できないため、Autodiscover 接続は失敗します。
プロキシの除外設定がされていない場合の対処方法
Outlook 起動時には Autodiscover 接続が実行され、空き時間情報取得のための URL や、オフラインアドレス帳のダウンロードのために必要な URL を取得します。メールアドレスが test@abc.com の場合以下の動作となります。
- abc.com の 443 ポートに接続 → ここはたいがい失敗
- autodiscover.abc.com の 443 ポートに接続 → DNS レコードがある場合は成功
上記いずれかが成功すると Autodiscover 接続は成功しますが、上記接続はプロキシサーバーを経由してはいけません。 IE のプロキシ除外設定では以下を設定する必要があります。
- Exchange Server (CAS アレイ名) の FQDN
- abc.com
- autodiscover.abc.com
原因特定のために、以下の手順により、[電子メールの自動構成のテスト] が正常に実行できるか確認する方法もあります。
- タスクバー上の Outlook アイコンを ctrl キーを押しながら右クリックします。
- [電子メールの自動構成のテスト] を選択します。
- パスワードを入力し、[Guessmart を使用する]、[セキュア Guessmart 認証] をオフにして、[テスト] をクリックします。
- [ログ] タブを選択し、[自動検出 成功] になっているか確認します。
自動検出が失敗した場合、失敗している箇所からプロキシの除外設定の有無を判断できる場合があります。除外設定に問題がない場合、ログのエラーコードなどから詳細な調査が必要です。
尚、Autodiscover 接続は一度成功すると成功したタイミングでキャッシュファイル (××× – Autodiscover.xml) を保持するため、Autodiscover 接続は失敗するが、予定表の空き時間の参照はできるといった現象が発生する事があります。
例えばプロキシの除外設定をはずしてしまった場合、予定表の空き時間の参照は問題ないが、認証のポップアップが多発する等といった問題が発生します。
また、ドメインに参加したクライアント端末の場合、プロキシ除外するアドレスは SCP に登録された URL のみで基本的に問題ありません。
(Autodiscover 接続では SCP 参照での 該当 URL 接続が最初に行われるため)
他のユーザーの予定表を表示するのが遅い場合の対処法
Outlook の動作に関連して表示が遅くなっている場合に改善が期待できる設定と、他のユーザーの予定表を表示する際の Outlook の動作についてです。
Outlook の動作に関連している場合の対処方法
他のユーザーの予定表を表示する際に Outlook の動作が関連して遅くなっている場合には、以下の設定を行う事で改善するか確認します。
オンラインモードの場合
毎回 Exchange サーバーのメールボックスにアクセスしてデータを取得するため、一般的にはキャッシュモードに比べて動作が遅くなります。
頻繁に Exchange サーバーからデータを取得する必要があるため、ネットワークや Exchange サーバーに負荷がかかり動作が遅くなっていることが考えられ、その場合には、キャッシュモードに変更する事で改善するか確認します。
キャッシュモードの場合
[共有フォルダーをダウンロード] の設定がオンになっている場合、ローカルにダウンロードされたデータの表示や更新を行うため、一般的にはユーザーの操作が速くなることが期待されます。
しかし、フォルダーに含まれるアイテム数が多すぎたり、OST を定期的に削除するなど、OST の再作成が頻繁に行われている環境では、同期 (ダウンロード) に時間がかかり動作が遅くなります。
その場合には、[共有フォルダーをダウンロード] をオフにする事で改善するか確認します。
Outlook の動作について
他のユーザーの予定表を表示する際の Outlook の動作は以下の 2 段階で行われています。
- 第1段階 : 可用性サービス (Availability Service) から空き時間情報を取得
- 第2段階 : 対象の [予定表] フォルダーに接続し、予定アイテムを取得
第1段階 : 可用性サービス (Availability Service) から空き時間情報を取得
Outlook から Exchange Server に対し予定表情報を要求すると、Exchange Server は可用性サービスによって空き時間情報を取得し、Outlook はその情報を表示をします。
第2段階 : 対象の [予定表] フォルダーに接続し、予定アイテムを取得
- 対象の [予定表] フォルダーに接続します。
- [参照者] 以上のアクセス権がない場合は接続に失敗し、これ以降の処理は行われず Outlook は第 1 段階で取得した空き時間情報を表示します。
- [参照者] 以上のアクセス権がある場合は、[予定表] フォルダーに接続して予定アイテムを取得します。
ここで、[共有フォルダーをダウンロード] がオンの場合は、他のユーザーの予定表がローカルの OST ファイルに全件取得されてから表示される動作となるため、同期が完了するまでは第 1 段階で取得した空き時間情報が表示されます。
[共有フォルダーをダウンロード] の設定による動作の違い
なお、オンラインモードで使用している場合は、[共有フォルダーのダウンロード] オフの場合の動作と同様となります。
- [共有フォルダーのダウンロード] オン の場合 :
OST にその予定表のすべてのデータが同期された後で、Outlook は設定されているアクセス権に従って OST ファイルからアイテムを表示します。
すべてのデータが同期されるまでは、Outlook は第 1 段階で取得した空き時間情報を表示します。 - [共有フォルダーのダウンロード] オフの場合 :
Outlook に表示する予定を含む一部のデータをサーバーから直接メモリに取得し、Outlook はメモリから表示を行います。
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